【賃貸オーナー向けコラム】 占有移転禁止の仮処分とは?

2020/03/16


賃貸の立退請求訴訟(建物明渡訴訟)を提起する前に、裁判所の保全手続きとして「占有移転禁止の仮処分」を行う場合があります。

本コラムでは、どのような場合に「占有移転禁止の仮処分」が必要となるのか、どのような手続きとなるのか、等について解説したいと思います。


 

占有移転禁止の仮処分とは?/どのような場合に必要となるのか?

任意で退去しない賃借人をその賃貸建物(アパートやマンションの一室など)から退去させるためには、賃借人に対して建物明渡訴訟を提起して、明渡の判決を取得し、それでも賃借人が退去しない場合には、強制執行手続きを行い、賃借人を退去させます。

この判決は、通常、訴訟の当事者に対してしか効力が及ばないのが原則ですので、訴訟提起時に、被告以外の者がその建物を占有していた場合には、その判決を用いて強制執行をすることができません。

賃貸建物の占有者が、賃借人以外の者になっている場合や賃借人が占有を他者へ移してしまう危険がある場合には、訴訟提起前に、占有者を確定させる必要があり、以後の占有移転を禁止する(又は、仮に占有移転しても、判決を用いて強制執行ができるようにする)裁判所の保全手続きが、「占有移転禁止の仮処分」と呼ばれる仮処分手続きになります。

この占有移転禁止の仮処分命令を取得し、これを執行することにより、仮処分後の占有承継者等に対しても、仮処分執行時の占有者を被告とした明渡判決をもって強制執行手続きをすることができるようになります。

また、この占有移転禁止の仮処分手続きは、そもそも、現状として誰が占有しているのか不明な状況になってしまっている場合にも、占有者不特定として、申立てることができ、その後の執行官による仮処分の執行現場で占有者を特定することができる場合があります。

以上から、賃借人が強制執行妨害などのために、他者に建物を占有させる危険がある場合や、既に賃借人以外の第三者に占有されてしまっている場合には、訴訟提起前に、「占有移転禁止の仮処分」を行う必要があるといえます。

なお、占有移転禁止の仮処分の発令には、通常、担保金の供託をする必要があります。


 

どのような手続きか?

占有移転禁止の仮処分命令がなされると、裁判所の執行官が賃貸建物(アパートやマンションの一室など)へ赴き、室内に立ち入って、公示書を掲示する等の執行手続きを行います。

このとき、相手方が室内に居ない場合もありますし、室内へ入れることを拒む場合もあり得ます。

そのような事態に備えて、通常は、いわゆる「鍵屋さん」(解錠技術者)を同行させます。

このように、占有移転禁止の仮処分命令は、裁判所の保全手続きとして、室内への強制的な立入りや公示書の掲示等が行われますので、これを契機にして、賃借人の任意の立退きがなされることも多くあります。


 

まとめ

以上のように、賃借人以外の者に占有が移転されてしまうおそれがある場合等には、この「占有移転禁止の仮処分」を積極的に活用することをお勧めいたします。

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