【弁護士コラム】スクイーズアウト(少数株主の排除)手続きの実践

2021/06/14


今回のコラムは、当事務所で「事業承継」スキームの一環として行っている「スクイーズアウト(少数株主の排除手続)」についてです。


 

スクイーズアウトの目的


スクイーズアウトは、事業承継の前段階で行われることが多い手続きです。

例えば、(現)大株主(兼 代表取締役)が次世代に会社を承継させたいと考えたときに、分散してしまっている株式をまず自分に集中させてから株式の承継のスキームを組むということが考えられます。

また、株式譲渡によるM&Aの準備として、株式を一人の株主に集中させたいという場面でも用いられます。

その他、株式が分散してしまっている場合に、それらを特定の株主に集中させたいときに利用されるのがスクイーズアウトです。


 

現状の株主及び持ち株数の確定


スクイーズアウトの計画をたてるには、まず、その株式会社の株主が誰か、持ち株数はどのようになっているかを正確に把握することが必要です。
これは、主に株主名簿、法人税申告書別表第2の記載、登記簿、過去の増資の登記書類、代表者等からの聴取などで確定していきます。

注意していただきたいのは、上記で述べた各書類と真実の株主・株式数が異なることが多くあるということです。

スクイーズアウトは、争訟リスクの高い手続きですから、株主・株式数を誤ったまま手続きを進めると後に手続き全体の瑕疵を主張されるおそれが高まります。

 

手続きの選択


スクイーズアウトには、次のような種類があります。

① 特別支配株主の株式等売渡請求

② 全部取得条項付種類株式を用いる手法

③ 株式併合を用いる手法

④ その他(株式交換,合併で金銭交付する手法)

それぞれの手続きには、様々なメリット・デメリット等がありますので、個々のケースに応じて、どの手続きを選択するか(どの手続きを選択できるのか)を検討し、スキームを組んでいきます。

どの手続きを選択するか考慮要素をいくつか挙げます(例えば、このようなことを考慮しながら、どの手続きを選択するか決定していきます)。

・持ち株比率

・排除対象となる株主の人数

・取得対価を金銭とする場合には、財源規制をクリアできるか

・取締役会設置会社か否か

・株価の公正な価格はいくらか


 

手続きの実施


上記の手続きを選択後、具体的なスクイーズアウト手続きを実施していきます。

どの手続きも会社法・会社法施行規則で詳細な規定がなされていますので、これに則ってスキームを組んでいきます。
会社の登記手続きが必要な場合には、登記申請も行います。

スクイーズアウトは、分散している株式を強制的に集中させるために必要不可欠な手続きであるため、事業承継の場面などでは、とても有用な手続きです。

しかし、排除される側の株主がいるため、争訟リスクが高い手続きであることも否めません。

手続きに瑕疵があると手続き全体の有効性が揺らぎかねませんので、スクイーズアウトを実施する場合には、慎重に専門家に依頼をして進めてください。

分散している株式のことでお困りの会社がありましたら、是非ご相談ください。